稲妻市へ/手乗川文鳥
 
ホームの柱には角丸ゴシックで神とだけ印字されたステッカーが貼りついていた
その柱にもたれながら乗車する予定の新幹線を待つ
正確には夫と娘が帰省するために乗車する新幹線を待つ
とうの二人は並んでホームの椅子に座り乾いたサンドイッチを頬張り
車内では騒がないこと
アソパソマソやプ利休アを歌わないことを特に念入りに
言い聞かせていたが
娘はスカートに溢れおちた玉子に夢中で
二人きりで完全な一組の親子でいるところへ
とても入ってはいけず
わたしは足元にカバンをおろして神にもたれていた


プラスチックで丸くて人工物であると無邪気に主張する青い座席が黄緑がかった電灯のひかりを跳ね返
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