黄昏の会瀬/愛心
 
しにがみにあいました

しにがみは おおきな かまをふりあげて
わたしのくびを はねようとしました

おもわず めをぎゅっとつぶると
いつまでたっても いたみがないので
おそるおそるめをあけました

しにがみは かまをじめんにおとしたまま たちすくんでいました

「如何に美しき娘か。黄泉へ送るは惜しい」

とぎれとぎれにききとれたこえは
むかししんだ おさななじみのおとこのこのそれに
とても よくにていました

そのせいか
にげることもできず

しにがみはうなだれ すわりこむと
てもとにおちていた かまをにぎりしめ
そのまま かたかたと ふるえていました
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