分身/あおい満月
 
夜がくるようだ。

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(私にとって体験こそが詩の命なんですよね)

友人が、
刃を向きながら私に話す。

体験。

一度だけ砕け散った身体の痛みの記憶。
洞窟に残ったままの 若い思い出。
私は爪をがりり、
たてながら欠片をかき集める。
永遠に揃わない、
終わりのないパズル。

***

からになると、
渇いてしまって
息苦しくなる私の部屋に
また新しいことばを吸い込む。
するとまた、
私のなかの血管が弾け、
なみだになり、
彼女を呼ぶ。
彼女は誰の目にも見えない、
けれど確実に存在する、
私の分身だ。
終わらない美しい詩を唄い続ける彼女が
また白いベッドに座り、
海のような空を見ている。

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