分身/あおい満月
ことばを吸い込むと、
身体中の血管が弾けて、
なみだになって流れていく。
そのなみだが、
地に落ちて、
灰色のキャンバスの上に落ちていく。
キャンバスの頬に
薄桃色の赤みがさして、
目を開き、
詩が目覚める。
*
彼女は白いベッドに座り、
カーテンから、
海のような空を見ている。
彼女は、
毎日少しだけ言葉を話す。
とてもとても小さな声で。
何を話しているのかはわからない。
けれどその言葉は、
この世の何よりも煌めく、
残酷で透明なことばたち。
彼女の瞳の色がまた、
灰色の虹に変わる。
もうすぐ夜が
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