◎捕囚/由木名緒美
ひとつの微笑みを基点として
暗喩の肖像をなぞるように
閉じた眼窩に灯す
瞬きをするより速く
私はあなたの核心に吸い込まれていった
すべての史生の機軸を発火前に戻してしまうことを
あなたは望んだのだろうか
視野の自律性さえ寛解して
あなたの細胞の一部となる
命を捧げるということ
その覚悟もせずに引いた引き金に
来歴のすべてを注ぎこんでしまった
幕は上がる
無慈悲に 楽観の極致に
義眼を落としたままま 光の明滅を感じて
輪舞が華やぐとこしえの夜に
時計の砂ははあらゆる幸先を沈めていった
この劇場を去る門はどこにあるのか
世界と幻の濃淡が淡く溶け合わされた
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