片胸/あおい満月
夕方、
車中で左隣に座った老人に、
肩で殴られた。
私のなかで何かがメラッと揺れて、
痛い!
と両手一杯に 石をぶつけだが、
老人は寝入ってしまった。
私には沢山の武器があるが、
誰の視線にも
この武器は振りかざせない。
刺を帯びた言い訳が、
駅のゴミ箱を
3Dの虹になって
ぶれながら漁る。
誰かがビリビリに破った
片胸を露にした女が、
泣きそうに此方を視ている。
(ばかやろう!)
吐き捨てた瞬間、
冷たい秋風が
鼻をくすぶる。
月が、
雲の手に導かれて
天上にある。
救ってくれるものは
なにもない。
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