楕円を描く雨/由木名緒美
かなしい雨
細糸の雫を見つめる双生の水晶体
いつか止むのだろうか
あの鈴の音が空へ駆け上がったなら
乾きは喉に集約され
無上の必然を照らし出す
許されること その贖罪を見据えなければ
無数のあらゆる恩恵は
光を失った蛍のように
帰るべき瀬を見失ってしまうのだろう
雨は降る
幾億の静止した慈悲となって
名も知らぬ彼の背を染め上げる
それが世界の意志であることを知るまでは
きっとそう遠くない未来
数多(あまた)の命を灯す蛹(さなぎ)であったことを
あなたが告解される朝に
ただ認知されない無音の夜を
存在のゆるやかな包括として
この世界の凹凸を庇うのだ
背丈の等しい葉波のように
個が水平を描く時
地平線に昇る太陽が
水滴を抱くように蒸発させるまでは
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