顔のうらがわ/
服部 剛
右手にもったきゅうすを傾けたら
青い湯飲みの底に花が咲いていた
一瞬にして
そそがれた緑のまどろみの下に
花は消えた
この湯飲みで
数百杯の茶を飲んでいるというのに
知らなかった
日々出逢う人々の
あたりまえの表情をひっくりかえしたら
それぞれの花びらが
まどろみをこえて放つ
小さい光に
「はっ」
とするのかもしれない
* 初出:同人誌「母衣」2号
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