黄金虫/あおい満月
 
切々になった階段が私を呼ぶ。
たった一粒の錠剤が
彼女の声と記憶を切り刻んでしまう。
切りぎざまれた彼女の声と記憶は、
ビニールテープになって、
夜の闇に凪いでいく。



割れた鏡に映る
私の名をもつ別の彼女が、
割れた欠片越しに
にやりと三日月をつくる。
背後から笑い声が
聴こえた気がして
あわてて割れた鏡を閉じる。
幾何学模様の窓
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