被存無垢(改訂再録)/たけし
 
眼下の川では子供たちが裸ではしゃぎ

遠く茶褐色の岩峰が冷たい灰色の空を背景に連なっている

僕はゆらゆら揺れる色褪せた肌色の廃棄バスの屋根の上

何とかバランスを取りながら何度も落ちかけ

終にもうダメだなと諦めたその瞬間

すっと視界が奥まり
 遠く広がる大地
川の水飛沫を透かして
 ずんと立ち上がり

その露な肉のようにうねりくねった褶曲造形の
深く青みがかった色彩が

くっきりと哀しく澄んで魂に響き広がる



気付けば裸の少年が一人

銀に煌めく川の中から半身を出し
盛んにこちらに手を振りながら無邪気に微笑んでいて

僕はバスの屋根の上

自分が生きていることを鮮明に実感する

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