稚魚/あおい満月
 


家に着くと、
一通の書類が入っている。
半年前に出した、
文学賞詩部門の選考結果だ。

(佳作に内定いたしました)

また佳作止まり。
いつまでも大賞を取れない。
彩がないのだ。
ずっと水槽のなかで
仲間だってモニター越し。

(井の中の蛙大海を知らず)

玄関に入ると、
暑さで横になった母親が
鯉の腹をみせていびきをかいている。

(抜け出したい)

見つめていた窓ガラスが急に水浸しになり、

(驟雨だ)

知らないうちに、
身体がびしょ濡れになっている。

(私は稚魚だ)
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