沈潜キセキ/たけし
 
硬い硬い残響に
冬の孔雀舞う
優雅に羽広げ
雪原を辿り

遥か突き上げた独立峰は唐突に
曇天の灰色背景に
クリーム色に映える
頂柔らかな円みを帯び

孔雀はもう止めどもなく涙を溢れさせつつ
時折飛び跳ねては進む進む
図らずも遭遇した光景に
滾滾沸き立つ自由の熱

冷気に息を弾ませ
盛んに轟く雪崩の音
彼女はもう理解している
自分が嘗て彼処から大地に飛び降り、今新たな糧を蓄え戻りつつあるのだと

けれど一息に飛び立てない彼女は
深い憧憬の念に襲われつつ動きを止め
これまでの己の軌跡が映像展開されるのを観る
内奥から、内奥に

奇跡の翼がいずれ顕わとなり
魂、天界を目指し
佳麗な身体を離脱するまで
遡行し続ける記憶の河

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