神隠し/為平 澪
 
西日のツンと熱さが刺さる土の上に
父の遺骨は 埋められた
真新しい俗名の墓石は それぞれの線香の煙に巻かれながら
親族が帰るまで夕暮れの空を 独りで支えなければ 誰一人として
家に帰ることは出来なかっただろう

役所からもらうたくさんの紙に 父の名は散らばり刻まれ転がされた
間違えられた「 父 」や「 本人 」という文字は シュレッダーにかけられ殺された
名前の欠片が灰のように飛ばされながら 塵のように「 父 」の影だけ残していく

完成書類に捺印が押され紙切れに命を吹き込まれると
ファイルたちが「 父 」を平らなケースに寝かせて処理する
紙切れは死んだ
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