使い捨てカメラ/為平 澪
 
想いを切り刻んで 記憶は泣く
スマートホンもデジタルカメラも 人の目に映らなかった頃
思い出を自販機で買い取った彼女の空は
空白のまま歳月を渡る
数年前傍にいたはずの笑顔は カラカラに干からびて
空へ昇っていった

(そんなにも性急に誰と瞬間を接続させたかったのだろう)

データに残らない【 写るんです】が、
枕の上で仰向けになったまま レンズで西日を追っている

その場かぎりの衝動を はした金で買われながら
文明の利器に 流され、流され、利用され、
簡単に 消耗されてきた女

白内障の眼が捉えているのは
青臭い映像の中の春の陽射し

光が眩しすぎると、陰は濃くなるものだ、
誰にともなく 呟くと
母は自分の世界に 瞼を閉じた
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