継承/Honesty
僕が目指す場所は、確かにその壁の向こうにあった。
僕は10年掛かってその壁を超克した。
すると目の前には、レンガが描かれた壁が立ち塞がっていた。
僕はまた10年掛けて大きくなり、その壁を蹴り砕いた。
すると今度は、分かれ道が描かれた壁が目前に現れた。
僕はさらに10年費やし小さくなり、その壁の小さな隙間を滑り抜けようとした。
僕はそのまま壁に吸い込まれ、微粒子となって壁の中を彷徨った。
そして遂に僕は、壁に描かれた大きな向日葵の黄色の一部となって、人生捨てたもんじゃなかったと思いつつ、次の来訪者を待っている。
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