けむる、浄化/為平 澪
 
ナニ、か、腐った臭いが立ち込める部屋で、老女が横たわっている。毎日堆く詰まれていくソレらに、埋もれて隠れたモノ。老女が自分の背中のジョクソウと、タオルケットとの間に挟み込んだモノ、が生きたまま腐ってゆく。

仏壇の前で吐き出され押し潰されたティシュが、丸み込んだ独り言をナイロン袋に一つずつ詰め込んで、口元を縛り上げて声を密封する、それが私の役割。今日も愚痴をこぼしたと指先に絡みつくヨダレがニィーと垂れて、私は真ん中から押し殺した叫び声や呻き声を取り出しては、ナイロン袋に詰めて静かにさせる。

光りの射さない仏間と客間を仕切る一枚の白い襖、その溝口から滔滔と流れ出す河で、老女は毎日頭を洗
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