夏の夢/
服部 剛
真夏の陽炎(かげろう)揺れる
アスファルトの、先に
琥珀に輝く円い岩が
ひとつ、置かれている。
額の汗を拭って、歩く
旅人の姿は段々…近づき
数歩前で、立ち止まる。
鏡に映るひとは、私だと知る。
夏空の小さい太陽という
照明は
鏡の中の私の遠い背後に燃えており
この鈍い、旅の歩調さえ
(見えない力が…押している)
木々の緑の葉影には
今日も蒸す、蝉の唄。
――私という存在は…もしや
祝福されているのかもしれない。
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