長椅子/……とある蛙
 
溯れない川の流れに似た
時間に浸りながら
自分の座る椅子を捜し回っていた
私の片割れの具象化した腫瘍は
いつまで経っても不定形の
気味の悪い生物で
恐ろしい程脆い
その割りにはしぶとく
いつまで経っても割り切れない

警察署玄関の長椅子の隅
少し浅く姿勢を正して
端座する初老の男は
一点を凝視する。
視線の先は
庁舎内案内のプレートなのだが
彼の網膜には
幼いころの青の映像が映る
黙っている 黙っている
何回も何回も砂山を作る
青の映像

セピア色の自分は走り回っている
その映像は青に染まる。
砂山を作る青に向かって
走り回る自分は
砂山を蹴飛ば
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