父へ/川瀬杏香
 
中学生の頃のよう
なんとも言えぬ息苦しさに耐えてます
あの頃もてんかん発作に怯え
呼吸のしかたが分からなくなりました
あれから十年以上たったのに
今はがんが怖くなりました
いいえ、ずっと怖かったのです
父の命を奪ったがんでした
いつかわたしもと心の奥で怯えてました

だから助けてくれたのは父でしょう

以前、父の形見の車に乗車中
4トントラックに追突された時も
父が守ってくれたのでしょう

父はとても短気で繊細で達筆な人でした
想いが通じなければ御膳の箸を投げ
日曜大工をする時は一寸の狂いにも納得せず
手紙を書くときは決まって広辞苑を引き
誤字も許さない

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