詩歌集「うずく、まる」より自選十五首/夏嶋 真子
 

何もない一日 雲を泡立てて貝殻模様のカップを洗う


花の雨 眠るわたしのこめかみにふれているのはくちびるですか


モノクロのアネモネきっとあなたならうすむらさきを選んで写した


はるじおん はるじおん はるじおんの字は咲き乱れ、銃声がなる


なぜだろう無意味なものほど愛しくて座席をひとつ移る夕暮れ 


うずく、まるわたしはあらゆるまるになる月のひかりの信号機前


みもざ、みもざ 歌ってほしい耳もとで雨粒よりも小さな声で


はじまりとおわりはわたしが決めること檸檬は荷から床にころがる


君までのきょりわるじかん、それははやさ。ひかり
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