在ることの意味/西天 龍
野の花に
問うても無駄なこと
そう言って風が通り過ぎる
混迷に一夜を歩き通し
見上げた道の先に明けの明星
それとて
在ることは意志ではない
そう風が言う
ならば何故…
問いを押し止めて風が言う
囚われるな
花の色、星の瞬きに
それに仮託する自分を解き放てと
路傍の仏に手を合わせたとき
とてつもない数の叫びが聞こえないか
在ることの意味とは
そういうこと
明けやらぬ群青の空
仏の口許の微かな微笑
花弁の奥の仄暗さ
そこに広がるのは
あなたの心そのもの
それを屈託なくのぞき込めれば
世界が在ることの意味が変わる
頑迷な意志などどこにもなく
しなやかなあなたの心が
どこまでも拡がっていく
改めて
野の仏に花を手向ける
音もなく過ぎ行く初夏の風
明けの明星はもう見えない
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