屋根裏部屋で「し」を作る/為平 澪
お腹から卵を一つ取り出して 私は一つの「し」をつくる
月に向かって 卵を放り投げておくと
月は空で泪目になるころ 「し」をこぼす
私は卵を産むために 屋根裏部屋で猫とじゃれ合い
卵を夜空に投げて月で割ると「し」ができる、という
仕組みを覚えてしまうと 遊ぶことに夢中になって
猫が愛しくてたまらない
ニャアニャアニャア、と啼けば啼くほど
正比例していく卵の中身の成熟さ。
猫は真っ赤な瞳を凝らして私を見ている。
まるで生贄にされたのは
卵なのか自分なのか、というように。
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