アリア/あおい満月
 
ているのに
どれひとつとして
あたしのこころにはリンクしない

母親の詩が書きたい

あたしは母親のことばの背骨にある
黒い大蛇の禍々しい情念を
ねこそぎあぶりだしたくてたまらない

「子どもなんか産まなきゃよかった!」
と当時短大を出て間もないあたしが
ことばと生きていきたいと告げたとき
母親はあたしに激しく落胆した

それでも、
あたしは母親との
真の和解を求めている
その日は、
やってくるのだろうか

夢のなかで
あたしは自分の眼を潰す
母親のかみしめている
あらゆる思いを理解するために
あたしの詩はまだ
母親のこころには届かない

岩場の亀裂の闇が
風に凪いでいる
深夜二時を過ぎても
あたしはパソコンに向かったまま
あたしの名を呼ぶ母親の寝言が
アリアのように聴こえる


                    過去作。
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