なめらかな小石/はるな
はさみは抽斗のいちばん上にしまってある。印鑑は四段目で、口紅はまたべつの場所だ。千代紙を買ってむすめに風船を作ってやりたいし、卵もない。
安らかさは、「ここ」よりは離れた場所にある。
つめたい、なめらかな小石のようなのだ。忘れるべきではないので、わたしは鍵盤のまえにすわって、文字を書くのだった。忘れるべきではないと思います、でも、それも忘れる。それは愛しいことです。安らかなことです。わたしはそのためになめらかな小石をペン立てのそばに置くのです。
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