満月/あおい満月
くろい満月が
手のひらに浮かんでいる
あたしの腕はあなだらけだ
あなのうえを歩いている
面接にいくまえに
立ち寄ったスターバックスの
本日の珈琲の黒いあなに
あたしはすいこまれて
ことばをうしなう
面接官との会話のあいだに沈黙の「穴」
ビニールテープになって切れてきた
あたしの職歴に「穴」
繕うには糸がたりない
あたしは髪の毛を抜いて
あらゆる穴をふさいでいく
そのうちまる禿げになって
その毛穴からあながひろがる
あなは呼吸だ
あなは生きている
快晴の空のうしろで
くろい満月がほくそ笑む
白い歯がきらり
おちてくる
空洞から、
海のこえが聴こえる
二○一三年度詩と思想新人賞第一次選考通過作品。
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