横浜/ヒヤシンス
すっかり改装された応接間に白い光が差し込む時、
僕は思い出の中で横浜の匂いを嗅ぐ。
まだ何も知らなかったあの頃の幸福は
クラリネットの甘い音色が包み込んでいる。
庭に抜ける大きな窓ガラスの向こうに色づいたアジサイが見える。
手入れの行き届いた祖父の庭にはいくつもの魂が遊んでいる。
祖母の台所仕事をしている音が聞こえる。
そして幼い僕は一人きり小さなソファーに腰をかけている。
幸福が妬みに変わるときもあるのだ。
僕がそうだった。
そしてそれを知る者は誰もいない。
人生も半ば、僕の横浜はセピア色に染まっている。
僕は一人きりが好きだ。
たまにはそんなことを言っても良いのだろう。
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