荒野に針路を取れ/平瀬たかのり
 
 映画を観てのことばは
 批評や感想ではなく
 あくまで実作において
 綴らなければならない

 実作すなわち脚本、そこに
 書くことの時間全てを当てよう
 カタルシスの意味において
 きっとそれはいっそうな苦闘だけれど

 目の前に果てなく広がる闇、そこは
 お金も時間も若さも才能も機会も
 ぼくよりふんだんにあるひとびとが
 さまよい歩いている荒野だ
 だからぼくは一歩を踏み出せず
 慄いたままでいた

 けれど決意の時はふいにやってくる
 それはいつもの朝だったりする
 「いくら落ちたってイノチまで取られるわけじゃない」
 ひとあし、ひとあし、ペダルを
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