あじのめだま/あおい満月
 
赤いマジックで
なまえを書く
書いても書いても
なまえは「名前」にならない
それどころか
書くほどにぶれて
水面をおよぐ魚の尾になって
ぴしゃり
血をはねる
はねられた
血の文字は
歩くうしろを
ぽたぽた
ついてきて
トイレのまえで
たちどまる
トイレの便器の闇が
目をみている
文字は手探りをしながら
便器の闇をおりていく



さかなをとってきたよ
少女がこの手にさしだすものは
乾いた魚の骨ばかり
いつも魚を食べるときは、
焼いた背の皮まで食べた
背骨をきれいに残して
星座にして皿の
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