ある鯉の幸福/opus
 
河原に掛かった赤い橋の上から
親子がパンを投げる
それに無数の鯉が群がる
複数の紺色の鯉
そこに黄色や赤、
そして、白地に赤の斑点
特別な物には目が惹かれるもの
パンは数少ない鯉の近くに落とされ
それを皆が一斉に狙う

ある一匹の紺色の鯉が
その集団から離れ
川の底流にただずんでいた
そこは川の外からは見る事の出来ない
暗く深い溝の狭間
その鯉はパンの取り合いから離れ
川底の苔を食べて過ごしていた
もちろんパンの方が美味く
腹も膨れ
力も出る
しかし、
鯉は体をぶつけ合い
奪い合うことが嫌だった
さらに、
川底の冷たい水の流れに身を任せ
その流れの
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