写真/為平 澪
 
写真になった父が 昔よりよく喋るようになった 
弘法大師ゆかりの寺で ボロボロのジャンバーに 
白髪を風に舞わせながら 少し笑ってピースなんかして 
誰もいなくなる家を前に大丈夫、だというふうに 
哀しく細い目を向けて 泣きそうなくらい優しく笑っている 
そんな喋り方をする父を前に 私はどうしていいのか泣いてしまう 
  お父さんほど私を放ち信じてくれた人はいなかった 
  私が心配ばかりをかけさせて殺してしまった 
いつ誰とでも帰ってきてもいいように家の周りのドブを浚え 
畑には少しばかりの野菜を植え 庭の剪定をふらつく足でし 
私の帰る家が笑われないように、居心地が
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