サイダー/アンテ
 

境内につづく階段は長くて
手をつないでいると
歩きにくいのに
離したら二度と会えなくなりそうで
はじめて着た浴衣の
袂をゆらしていた
あれは
いくつの夏だっただろう

抱きかかえられて
屋台の氷水の入れ物に
手をのばして
不安そうに振り返った少女に
母親がささやきかける

炭酸は大きくなってからね
いさめられたのは
あれは
いくつの夏だっただろう

海からの風が気持ちいい
電灯の明かりが
連なって街路樹を照らしている
夏の夕暮れが
名残惜しそうに藍色を引きずっている
きっと
花火がはじまる前に
力つきて眠ってしまうだろう

少女が笑う
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