花        陸が海に消えるまで。/為平 澪
 
 先生、私たちの昼間が消えていきます。
カレンダーに休日がひとつ、足りないのです。
青と赤の隙間に、数字のいち、が。
時計は、今、だけを、さしたがる、から、痛い。
数字が昨日と明日を覚えることを放棄したみたいに、
短針のいち、も、長針のいち、も、かみ合わない。
埋没していく、いちにち、いちにち、カチコチ、カチコチ。

 今日、先生に一編の詩もかけなかった。
あなたの人生に触ることができなかった私を、どうか赦してください。
私の胸のふたつの丘陵から海にくだる腹部、
水に浸った子宮へ、指をはわせると、
ころがってゆく先生のコトバを、うみなおせないまま、

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