町/アンテ
小さな町のはずれで
旅人は力つきて倒れ
そのまま動けなくなった
かれこれずっと
なにも食べておらず
水も一滴も飲んでいなかった
町の空気は乾いていて埃っぽく
川も干からびていたし
くすんだ色の葉をつけた木が
まばらに見えるだけだった
住民はしばらく
家の陰から様子をうかがっていたが
ばらばらと出てきて
旅人を足で突いたり
荷物の中身を探ったりした
旅人はかろうじて息をしていたが
ぴくりとも動かなかった
背負っていた大きな荷物には
ポケットがたくさんあって
開けると小さなかけらが転がり出た
集めてみると
かけらは勝手に組み合わさって
気味悪くうごめいた
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