傷跡は春に包まれて/
りゅうのあくび
鉄道の車窓からは
藤の花が咲いている
もう夕焼けは暖かくて
*
今夜から彼女は
まるで庶務ができない僕の
先生になる予定がある
年上の伴侶へと
少しは事務仕事の腕を上げるようにと
家事にもよく似ている庶務について
教えを請いながら
*
生徒になったばかりの僕は
先生の左足にある
痛みを丹念に手当をする
次々と先生が
求め続ける宿題
はらはらしながら
しっとりとして
うららかに
傷跡は春に包まれる
[グループ]
戻る
編
削
Point
(9)