それじゃあ電車に間に合わないから/カマキリ
毎日の夢の終わりに旗を振っている人達がいる
あれは何だったか分からない
勢い良く脇を通り過ぎる獣の
ひとつひとつに名前をつけるわけにはいかない
本当にあれは何だったか分からない
押し続けるちからは
重く沈んだギターの音に似ている
きっと優しい人が
交差点の向かいでボタンを待っていて
ほんのちょっと、ほんのちょっといい事があったから
足跡を振り返る時間ができたんだ
でもそれじゃあ電車に間に合わないから
定期入れを探すふりをして
溶け込んだ空気を胸のポケットにしまっている
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