にくしみ(要冷蔵)/竹森
た(人形からは納豆の臭いがした)。赤子はへその緒の先端に実った蕾のようだった。竹森は赤子を掴み、腹を裂いてみた。中に花びらのようなものは詰まっていなかったので、内臓を取り出し、代わりに髪を燃やした跡の灰がまばらにかかった乾いた花びらを詰められるだけ詰めた(薔薇の花びらだったと思う)。それから赤子を冷蔵庫に入れた(冷蔵庫に入れた方が日持ちする事を知っていたのだ)。冷蔵庫を閉じる時、へその緒が扉に挟まりナナは痛みを覚えた。僕は彼女がへその緒が挟まるだけで痛みを覚えるのにその先端に膨らむ赤子の腹を切り裂いても痛みを覚えない事を不思議だと思った(花弁は茎に痛みなく咲き開く。そんな当たり前の事を)。
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