満月/Lucy
 
  

おとうさん
あとどのくらい
私は生きるのでしょうか
あなたの
居ない世界に

あなたのことなど
ほとんど忘れて
生きてきた年月

これ以上なにが
見えてくるのか
知りたくもないことばかり
憶えて

あの日
緑の稲をそよがせ
やわらかな風が
吹いていた
山の上に
大きな月がのぼった
蛙の鳴き声がして
世界は
それですべてだった

おとうさーんと呼ぶと
遠くで手を振る
父がいた


戻る   Point(12)