夜行/
為平 澪
闇色のコートの肩に刺さる
いくつもの銀糸の雨を
拭ってあげることもできないままで
私は冷たい夜を行く
棘のある視線を伏せて
唇だけを動かして見せたけど
今さら何を伝えたかったのだろう
何者にもなれない 不透明で無機質の私が
腐らせ萎れさせた 紅い花
闇色のコートが濡れているうちに
ひらいた唇を押し当てたなら
なにか、を 咲かせられただろうか
戸惑いが瓦礫のように降り積もる夕暮れ
アパート窓辺には
無言の夜に苛まれた 唇と薔薇が
闇に したたる
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