機械仕掛けのラプソディ/りゅうのあくび
 
十字路を曲がる
手前の道で
お洒落な堕天使たちは
漆黒のハートマークを
隠している

小さな機械仕掛けの電話機を
白い手のひらで
握り締めていて
まるでレザーの
ロングブーツを
履きこなしながら
靴音を鳴らすように
魔法の言葉を伝える

暇を持てあます
黒のスーツを着た小悪魔たちを
コードネームごとに
そっと飼い慣らしている
誰も知らない秘密の暗号を
機械に唱えさせると
小悪魔たちと綺麗な堕天使は
地図と合言葉と
恋のやり取りを始める

サイトと呼ばれる
仮想現実の世界に
小さな遠雷がほとばしる
桜の花びらが舞い落ちるまで

近頃
街中で聴こえる
誰かとの話声は
機械仕掛けのラプソディみたいに
夜空にしっとりと
響いている

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