龍人さんへの小詩集/宣井龍人
する
掘る
男は掘る
力強く掘る
狂わしい上半身を月光が照らす
男は流れる汗を拭おうともしない
掘る
男は掘る
力強く掘る
やがて一面の砂浜を月光が照らす
そこには繰り返す波音だけが響いた
【ある日の龍人さん】
たまった仕事に許しを請い
飲んでもいない千鳥足
暗闇に押されて歩を進め
重いドアを押し開ける
せせこましさから遮断され
肩で息
口で溜息
薄汚れたボロボロの仮面
無造作になった龍人さん
獲物は無重力の言葉達
短い命をひらひらと
早速虫採り網を引っ掴み
勇んだ子供が振り回す
見れば見るほど消えていく
追えば追うほど去っていく
何ももらえない龍人さん
仮面も取れずに夢の中
最高の笑顔の夢の中
ああなさけなや(ガックリ)
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