日本一小さな港*小良ケ浜漁港/黒木アン
 
一気にすごせば

秋山を
踏みわけながら
稲も色づきはじめ
農夫は月をよみ
飽くことのない
自然の業に
田畑のあいだに
汗がよろこび
紅葉かがやくのが
常でした

やがて
又かけ足でやってくる
雪舞う冬に
囲炉裏にかがんだ
ちゃんちゃんこは
話に入り
ねんねこに埋めた
小さな頬は愛しくて

身酒か玉子酒か
どちらにしようか
だなんて



いい港がありまして

トンネルを
くぐり抜け
荒波に小舟を
おろした
冬海も
おだやかな浅瀬に
流れた時も
打ち寄せる波は
約束された
ふるさとでしたのに

此処にしかない
揺る
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