おいらに乾杯/服部 剛
 
日々の芝居に疲れた、夜は…
ちょい横道に逸れて
路地裏のBarの
ドアを潜り――仄暗い
カウンターに、腰かける

旅の途上のおいらだが
今まで越えた峠を、指折り数えりゃ
一つ・二つ・三つ・四つ…

ふにゃふにゃ男(お)でまっ青だった
いつかのお前も
よくぞここまで来たものだ
そんな自分をたまには讃えてもいい…

カウンター越しに手渡された
グラスに浮く、氷を鳴らし
「おいらに乾杯」

だんだん頬の赤らむ頃には
バーテンのシェイカーふる音に誘(いざな)われ
こくり…こくり…

   *

――転寝(うたたね)の夢の中
  夜空から舞い…この頬に、落つ
  雪のひとひら  






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