幸福の手紙/
服部 剛
窓から仄かに日の射す部屋で
幸福の手紙を綴る少女は、顔をあげ
無心でキャンバスに向かう男を
ひと時――みつめる
少女のまなざしは
幾百年を経て
遠い異国の美術館を訪れた、僕へ
届くことも知らずに
目を閉じる僕は――聴いた
額縁の中で微笑む少女と、僕の間に
体の透けたフェルメールは、腰かけ
キャンバスの余白の(少女の袖)を
黄色く埋めてゆく…微かな、筆の音を
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