日曜画家/やまうちあつし
せっかくの日曜なのに
私には描ける絵がない
私には筆がなく
私にはカンバスがない
私の街には森がなく
湖がなく
私の家のキッチンには
新鮮なオレンジも
燃えそうなリンゴも
清楚な百合も置かれていない
そして何より
描くべき誰かが
居間にも寝室にも
屋根裏部屋にも
公園にも学校にも
街中を探しても
見当たらない
私は途方に暮れる
こんな日曜はめったにないのに
膝をつきうなだれる
私はいつしか
一枚の絵になっている
やがて越してきた
見知らぬ人が
部屋の壁に絵を飾る
こんな日曜はめったにない
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