垂乳根の母にあいし夜のこと/月形半分子
 



あれはもとはケヤキの大木だろうか

月明かりの下、公園のフェンスのわきに

大きな切り株があるのをわたしは見た

雨も降らずにいたものをと、ずいぶん月あかりに光るのを不思議に思い近づくと

切り株は表面に、こんこんと蜜色の樹液を湛えては、溢れるままにこぼしていたのだった

それは赤子を亡くした母の乳房、そのものに


生すがままに 無すがままに

なるがままに なせども なせよ

その乳房のあるがまま


いつか幼いわたしに、母がくれた白い小鳥の羽根ひとつ

あれは今でも、右のあんよの靴下に

だから 母よ
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