エスキス4〜生まれた人/宣井龍人
とても不思議だか
とても当然だか
わからないのだが
実は
自分しか存在しない
と思っていた
息を止めて
目を閉じて
瞑想して
苦しくなって
ブアッと吐き出して
それは
みな僕なのだ
感じることは
僕しか出来ない
生暖かい風が吹き抜ける
街を行き交う人々
スクリーンに投影されたように
薄っぺらだ
ところが
やあ久しぶり
と近寄って来た男
と握手をした
僕は手を握られた
彼の血や脈動が手を駆け登る
僕は
とんでもなく驚いた
せっかちにこの世に生まれた時
と同じ顔をしたに違いない
やっと生まれたのだ
そんな僕の驚き
とは関係なく
ベルトコンベアに乗った僕達が行き交う
薄っぺらな僕達の瞳
には僕が居る
僕も
薄っぺらだ
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