崇高なもの/やまうちあつし
 
五月の風の透明さ
雨上がりの石畳のにおい
雪の朝の静寂
足元をさらう波の清廉さ
出発前夜の胸のざわめき
日曜午後のあきらめにも似た安らかさ
わからなすぎる夜の身もだえ
泳いだ後の満たされた疲れ
老婆の笑顔
生まれて間もない赤ん坊の握力
隣家の飼い犬の落ち着き
近所の野良猫の気ままさ
許せずに泣いた日
許されて泣いた日
信じると言った時の口の形
信じないと言った時のまなざし
校舎上空を漂う雲のあまりの長大さ
夕焼けで燃えそうな西の空
落ちそうな満月
消えそうな三日月
忘れられない
かもしれない
あなたのあだな
崇高なもの
いつか、誰かと、見た、ユー、エフ、オー。
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