祈る、握る、抱く/ブルース瀬戸内
 

来ないのは分かってんだ。
俺なんかどうせモテない。
駅を間違えたふりをして
現実から逃げてしまった。
そう正直に語ってくれた。

僕はあの人の手を握って
もう逃げなくていいです。
悔いを背負いましょうよ。
そんなに目の輝いた人は
悔いの重さに負けません。
悔いを背負い投げですよ。

僕がそう言うのと同時に
一人の婆さんが現れると
あなたもしかしてと尋ね
あの人の目がかっと開き
二人は自然に抱き合った。

こんなこともあるのかと
こみ上げるものを堪えて
僕は手を洗うため去った。

あとで分かったことだが
抱き合ったあの婆さんは
知らない人だったそうだ。
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