まほうの杖/Lucy
おとうさん
あなたの遺した杖がある
この杖をつき
生まれ故郷の野山を散歩するのが
最後の楽しみだった
歩くことができなくなってからも
ふるさとの山の桜を見に行くことが
最後の希みだった
春には遠く雪深い季節に
あなたの命の灯は消えた
元気で働いていた時よりも
強く自己主張していた若い日よりも
すっかりあなたらしく
ふるまえなくなってしまってからの姿が
実は一番見事にあなたらしかった
と 今思う
私はこの杖があれば
どんな闇の中も歩いて行けそうだ
高くかざして
呪文を唱える
ルーモス 光よ
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