かものはし/nonya
 

敏感な唇に染みてたまらなかった
僕は涙のかわりに詩を垂れ流した

天井の木目は数え尽くしたけれど
キーボードはもう叩かない
ネットは溺れたがっている者と
助けるふりをする者のためにある

缶詰の買い置きが底をついた日に
僕は意を決して家を出ると
近所のつまらない橋の上から
何のためらいもなく身を投げた

体が軽くなった
誰かが叫んでいた

意識に水かきがついた
誰かが駈け出していた

目を閉じているのに何もかもがよく見えた
サイレンが近づいてきた

誰も僕を助けないでくれ
浮輪なんか投げないでくれ

誰か僕を捕まえてくれ
捕まえて水族館の名札のついた水槽に

放り込んでくれ



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